(旧 acha滑空工房)
「鳴かぬなら、あれこれやってみようホトトギス」
未開拓なものを求めて・・・やってみるぞお。 (^^)
滑 空 と 急 上 昇 の 原 理
「 目 次 」 
1) 揚力を得るための原理
2) ピッチング(上下方向)のバランス調整
3) ローリング(横傾き方向)のバランス調整
4) ヨーイング(左右方向)のバランス調整
1) 揚力を得るための原理
逆走エギも、水中という大きな条件の違いはありますが「飛行機の原理」や「凧の原理」もしくは「パラグライダーの原理」の延長線上にありました。試作当初、なかなか効率的に滑空しないので飛行の事について、いろいろ勉強しました。その時を思い出して、空中での飛行力学と、逆走エギでの水中滑空力学を比較しながら整理してみました。


飛行機は翼の上面と下面の圧力差によって揚力が発生します。そのしくみは「翼の形状による揚力」や「翼が流れと当たる角度(迎角)による揚力」によって決まっているようです。
逆走エギは、右下図のように円筒の立体翼を採用しています。滑空する角度(水流)に対して翼となる筒が角度を持って衝突し水流の向きを変えます。これが揚力を発生させています。

翼が揚力を発生するには次の2種類があります。一つは、下図(左)のように翼形状により、翼の上面と下面で、上面の方の圧力が低くなるようにして、翼を持ち上げるもので「ベルヌーイの定理」というそうです。
もう一つは、下図(右)のように、さらに翼に角度(迎角)をつける「凧の原理」です。


2) ピッチング(上下方向)のバランス調整
翼と水流との角度(迎角)を大きくしすぎると、飛行機には「失速」と呼ばれる現象が起こります。これは図のように翼の角度が上を向きすぎてしまった時に、翼の後ろで空気の流れが乱れ、渦が発生してしまった時に起こります。 
こうなると翼の回りの空気が乱れ、もはや圧力差(すなわち揚力)は発生しなくなります。失速状態に陥ると飛行機は急激に降下し、下手をすると墜落します。
@補助翼(尾翼式)によるピッチング制御
現在のほとんどの飛行機は、重心近くに主翼があり、後尾に小さな尾翼がある形になっています。これは尾翼にあたる風がテコの原理で機首を下げてくれることを考えたデザインになっています。図に書いたように、飛行機の機首が上がると、主翼も尾翼も風を受けます。主翼の方が広いので、より大きな力がかかりますが、重心の部分にあるので、飛行機を回転させる力にはなりません。尾翼にかかる力は、飛行機を正しい姿勢に戻そうとする力になります。


逆走エギにおいても、この原理を利用しています。また、主翼に対して尾翼が大きめとなっています。これは釣糸を引っ張って滑空するためです。
逆走エギは、必ず釣糸が接続されており、釣糸を引っ張りながら滑空するためです。

釣糸のライン張力は、逆走エギの機種を下げ墜落する方向に力が働きます。それは釣糸接続点が図のように下方にあるからです。その理由は、逆走エギが、シャクリでは急上昇する機能も持たせるためです。シャクリ時には「凧の原理」にてバランスするために釣糸接続位置が凧のように翼から離れた位置として限定されているからです。
したがって、逆走エギは、ある程度の長さの釣糸を引っ張らないと、逆に失速し滑空しないのです。釣り場での実際のライン張力が合わさる事により、初めて失速しない角度で滑空します。
A補助翼(先尾翼式)によるピッチング制御
尾翼は主翼に対する補助翼で主翼の後方に位置しています。この逆に前方に付いている補助翼の場合が先尾翼式と言うそうです。
初めて動力飛行に成功したと言われるライト兄弟の飛行機は、今の配置と逆で主翼が後ろにあり、補助翼は前の方についていました。その代わり、前後の翼に角度差をつけ、常に前の翼が先に失速状態に入って機種が下がるようにしておくなどという方法が取られていました。

逆走エギは、現在の飛行機と同様に後方に尾翼がありますが、この先翼式のと尾翼式は、注目すべき滑空特性の違いがあります。尾翼式は、安定性が高く高速滑空向きです。逆に先翼式は不安定というより反応が早いと言えます。
第二次世界大戦の終盤に造られた”震電J−7”(製作は九州飛行機)という戦闘機は先尾翼式で旋回性能を追い求めたものだったとか・・・。
逆走エギは、急上昇から滑空状態に入るまでに一瞬の時間ロスがあります。この時間的ロスが、先尾翼式の方が短くできるかも知れません。滑空状態でもなく急上昇状態でもないロスタイムを少なく出来るためです。
B振り子の原理(オモリ)によるピッチング制御
パラグライダーには主翼しかなく、補助翼がありません。にもかかわらず安定して滑空しています。それは振り子の原理のようです。

オモリが左右に動いても必ず元の位置に戻ろうとする。これは重力の方向に戻ろうとする力のためです。パラグライダーでは、人がオモリの役目となって、下にぶら下がっています。しかも人と翼となる部分は数十本の糸で結ばれていて、人と翼が連動することにより安定します。しかも、速度が無い失速状態でも安定性を維持できます。逆走エギは、この速度ゼロでの安定性を利用しています。
C振り子の原理(浮力)によるピッチング制御
さらに水中では「浮力」が影響します。この浮力も利用出来ます。浮力材を上方に取付け全体の重心を下方にすると、やはり「振り子の原理」にて安定した滑空が出来るようになります。
しかし浮力にはデメリットもあり、その容積が滑空の抵抗にもなってしまいます。
開発の初期段階では、下の写真のような、ビックリする形状でも滑空が可能とわかっています。
このことは、バランスの向上といった面よりもデザインの自由度が拡がることが魅力です。
D振り子の原理(釣糸接続点)によるピッチング制御
釣人がシャクリを入れると逆走エギは急上昇します。それは「凧の原理」とまったく一緒です。
滑空時は、オモリにより「振り子の原理」で安定していましたが、シャクリでは、釣糸接続点に働く張力により凧のように安定させています。凧の場合、糸がどんなふうに結ばれているかというと、凧から一定の距離が離れた位置から数本に分かれて、凧の上下左右と接合されています。したがって、糸を引く方向に対する凧(翼)の角度が一定の角度に維持されます。これが急上昇時のピッチング制御となります。
逆走エギなどでは、糸を上下左右から張る替わりに、ステンレス線などを伸ばし、翼から離れた位置にて釣糸接続点を確保しています。

3)ローリング(横傾き方向)のバランス調整
飛行機が横倒しになった時に元に戻るようにするための工夫とは?



@ 反角によるローリング制御
上図のように、翼を少し上に反らせます(この反らせる角度を上反角と言います)。飛行機が傾くと、落ちた側の方が上から見た面積が広くなるために揚力がまし、飛行機を元に戻すような力が働くようです。
しかしながら、戦闘機の翼と見比べてください。逆に機敏に姿勢を変化させる飛行機では安定性はじゃまとなり、逆に下反角を持たせる場合もあります。
そう言えば、カモメやツバメ等の鳥も、激しく左右に飛ぶときは戦闘機のように翼を下に向けて飛んでいます。同じ理由なのでしょうか?
逆走エギでは、右写真のように胴体翼というよりも立体翼といった形状の翼となっており、上反角と言った角度は存在しません。 このために、次で述べる「振り子の原理」を応用することだけでローリングのバランスをとることで設計しています。
A振り子の原理(オモリ)によるローリング制御
翼の下方に距離をとってオモリを取り付ける事により「振り子の原理」を応用します。写真に示すように、筒の上側が翼の役割をし、筒の下側にオモリが取り付けてあり重心が翼の下方にあります。これにより「振り子の原理」が働く事によりバランスを制御しています。滑空速度ゼロでも安定できることがポイントなのです。
B振り子の原理(浮力)によるローリング制御
ローリング制御においても、ピッチング制御で紹介した浮力を利用したバランス制御が特に有効です。浮力材を上方に取り付ける事により、さらに安定したバランスを維持できます。
さて、写真のものですが、グライダーでは反転して全く安定した
飛行は不可能な形状ですが水中では架空出来ます。上方についている浮力材により見事に安定して滑空出来ます。空中で例えれば飛行船といったところでしょうが、この場合は、浮力はバランスだけに使用し、揚力は翼を使用しているところが違います。
C振り子の原理(釣糸接続点)によるローリング制御
さて、シャクリでの急上昇時のローリング制御はどうなっているのでしょう。やはりピッチング制御同様に「凧の原理」とま
ったく一緒です。
4)ヨーイング(左右方向)のバランス調整
飛行機を上から見て、進行方向と機体の向きのズレを「ヨーイング」というそうです。
飛行機の場合は、ヨーイングが発生すると、垂直尾翼が風見鶏と同じ原理により、もとに戻る方向に回転し、機体は実際の飛行経路を向きます。
@垂直尾翼によるヨーイング制御
逆走エギでは、飛行機のような垂直尾翼をあまり採用していません。何故ならばデザイン的に合わないことが多いからです。では、どうやって制御しているかというと、次に書いているライン張力を利用した制御としています。


Aライン張力(シッポ)によるヨーイング制御
滑空時の制御方法です。
必然的に発生するライン張力を「凧のシッポ」のような作用を期待した設計としました。
滑空時には本来抵抗でしかないラインテンションを凧のシッポと同じ機能をさせることにより、偶然にも方向性と安定性を確保しています。
したがって、釣糸を付けずに単体で水中に放しても、安定せずにフラフラと滑空する設計となっています。
B振り子の原理(釣糸接続点)によるヨーイング制御
急上昇時制御方法です。
これはシャクリにより急上昇する場合に、オモリが下方に位置することから、同じように「振り子の原理」によりバランスしています。